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目と手の協応 ― Eye-hand coordination
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これまでの活動を通して、赤ちゃんは見たものに手を伸ばし、触れる体験をしてきました。
目で見たものの形や距離感など視覚からの情報、そして、実際にそのものに触れることによって
得られる質感、重さ、固さ、温度などの感覚。
それらが統合される経験を繰り返すことによって、子どもは認知機能を発達させます。
視覚と指の動きを統合させ、見たものに応じて手を操作することを、目と手の協応といいます。
この時期の発達の課題のひとつが「目と手の協応の獲得」です。
ここからの約1年間は、手を使う機会をたくさん作って、さまざまな手の動きを学びます。
ここで紹介する教材は、無理なく少しずつ、できることが増えていくように
発達の段階に応じて準備されたものです。
子どもが興味をもったものに、思う存分、関わらせてあげてください。
大人の役割は、子どもの様子を見ながらいくつかの教材を棚に出して
やり方を見せてあげることです。
発達の段階に限らず、興味は子どもの個性やその日の気分でも変わります。
先に進ませようと、教材を押し付けてはいけません。
できるようになることは、楽しいのです。
自分の思い通りに身体を動かせるということは、嬉しいのです。
褒める必要もありません。
できたことを、いっしょに喜べることが大切なのです。
![画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: f1335paint_1-1.jpg](https://life.love-everything.me/wp-content/uploads/2021/04/f1335paint_1-1.jpg)
起き上がりこぼし Motion Wobbler
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手はまだ4本の指だけを使い、手のひらや親指は使っていません。
熊手でかき集めるような動きをしています。
これは、高さ12㎝ほどの小さな起き上がりこぼしです。
手で触れるとゆらゆらと傾き、また戻ってきます。
動くとボールがスライドして、楽しいクリック音を出します。
わずかな力で触れても大きな動きを返してくれるので
自分の行動によって起こることの結果(因果関係)をわかりやすく知ることができます。
知っている物のかご Basket with Known Objects
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これまでうつ伏せか仰向けで横たわっていた身体は
最初は支えられながら、次第にひとりでお座りができるようになります。
おすわりができるようになると、両手が自由になります。
これから手の動きは広がり、大きく変わります。
浅いかごに、子どもが知っている家庭用品やおもちゃを2つ入れて
おすわりしている子どもの前に置いてあげましょう。
子どもは選んだものを手に取り、活動します。
わたしたちの日々の生活は、小さな選択の連続です。
大人は「選ぶ」ということに慣れていますが
経験が少ない子どもは、選択肢が多すぎると選ぶことができません。
まずは2択からはじめて、慣れてきたら3つに数を増やします。
カップとボール Wooden Cup with Egg
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木製のたまご型の立体と、それがぴったりおさまる木製のカップです。
本物の卵とおなじくらいの大きさで作られています。
球体のものがある場合には、たまご型のほうが持ちやすいので
子どもにはたまごの方を先に紹介します。
たまごをカップから出し、それをまた入れるという活動ですが、
子どもは最初、たまごとカップを同時に握り、打ち合わせることを楽しみます。
どんな扱い方をしていても、危険でない限りやめさせる必要はありません。
これもまた、同時に両方の手を使うという、貴重な体験です。
今後、服を着る時などに必要な重要なスキルのひとつです。
やり方を見せる時には、左手でカップを押さえ
右手の3本指でボールをカップから出して、たまごをカップに戻します。
両手の動きが異なるところを、しっかりと見せます。
この時期の子どもは手のひら全体でたまごを握りますが
見せるときには3本指で持つことを強調します。
それは、子どもの次の把握のステップが、親指と4本の指の対応につながるためです。
まず、子どもはカップから、たまごを捨てられるようになります。
そして最終的には、たまごを元に戻すようになります。
箱と立方体 Box and Cube
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たまごの出し入れができるようになったら、箱の中に立方体を入れる活動を紹介します。
球体と違って、角を合わせないと入れることができないので、難易度が上がります。
ぴったりのサイズの箱よりも以前に、まず大きさに余裕のある箱をあげましょう。
様子を見ながら、徐々にぴったりのものにしていくと、スムーズに次の段階に進むことができます。
立方体の一辺は3㎝~4㎝です。
箱は紙製でも、木製でも構いませんが、口に入れる可能性を考慮してください。
立方体を箱から出すときは、手のひらで箱の上下をはさんで、箱をひっくり返します。
その後、左手の上に箱を持ち、右手で持った立方体を箱に入れて見せます。
トレイとボールの箱 Box with Tray and Ball
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箱の穴にボールを落とすと、トレイにボールが転がり出てきます。
落としたボールは、いちど子どもの視界から消えます。
そして、転がり出てきて再び見えることが、この時期の「対象恒常性」の発達を助けます。
「対象恒常性/物の永続性」とは
「ある対象が目の前から消えても、その対象自体はなくなっていない」という感覚です。
成立するのはおよそ生後8か月頃といわれています。
カップとボール、箱と立方体で行ってきた、把握したものを目的の場所で手放すという
目と手の協応は、この活動を通して、さらに意識して行われるようになります。
手のひら、手首、指をコントロールし、目的を達成するという経験を繰り返すことは
手の動きを洗練させると同時に、子どもの自立心、自尊心を高めます。
やり方を紹介する時は、子どもの目の前に、トレイが手前に来るように箱を置きます。
大人は子どもの右側に座ると、視界を遮らずに動きを見せることができます。
3本の指を強調してボールを持ち、穴に落とします。
同じ動きを、反対の手も使い、何度か繰り返します。
もちろん、子どもが手を伸ばしてやりたがったら、すぐに変わってあげましょう。
子どもはトレイを横にして活動するかもしれないし、これはいったいどうなっているのかと
ひっくり返したり、打ち付けたり、持ち上げたりして調査するかもしれません。
大人は無理にやめさせることはせず、安全に配慮して見守りつつ、正しい活動の仕方を
繰り返し見せます。
ひとしきりすれば、子どもは調査に満足して、活動に導かれるでしょう。
なぜなら、発達段階にあった教材は、間違いなく魅力的で子どもを惹きつけるからです。
もし子どもが活動に興味を示さなったら、その教材は子どもにとって簡単すぎるか、
難しすぎるか、いずれかで発達の段階に見合っていないと考えられます。
個性や興味、経験などによっても変わってくるので
このサイトではあえて、それぞれの教材を月齢で紹介していません。
その活動が発達に貢献するものかどうかは、とてもわかりやすく明確です。
子どもが生き生きと、集中して何度もかかわる姿が、それを教えてくれるのです。
引き出しとボールの箱 Box with Drawer and Ball
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長方形の箱の穴にボールを落とすと見えなくなり、引き出しを引くと、中からボールが出てきます。
引き出しには傾斜がついていて、手前に転がってくるようになっています。
子どもの前に、引き出しが右にくるように箱を置きます。
安定するように左手を箱に添え、右手で引き出しを開けます。
ボールを取り出したらいったん置いて引き出しを閉め、ボールを穴に落とします。
トレイ付きの箱では自然にボールが出てきましたが、引き出しは見えなくなったあとに
アクションを起こさないとボールを見つけることができません。
落ちた穴をのぞいて見ても、そこにボールはありません。
問題解決力が目的に加わります。
引き出しを閉じずにボールを穴に落とすと、大人の手助けが必要になります。
ボールを取り出し、いったん置いて、引き出しを閉める、という流れを
丁寧に見せてあげましょう。
ボールを押し出す箱 Box with Balls to Push
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ハンマーで叩くおもちゃとして売られているものですが、ここでの目的は指先を使って押し出すことです。
まだ動きが洗練されていない子どもが、ハンマーを振り回すのは危険なのでおすすめしません。
穴の上に木製のボールを置き、両手の指全体を使って押し出します。
パーの手で押す子どもの姿も見られますが、指先を強化するために指で押すことを見せます。
毛糸のボールと箱 Box with Knitted Ball
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引き出しのついた箱の上部に、穴があいています。
穴よりも大きい毛糸玉がセットになっていて、穴に押し入れて落とします。
穴の直径が5㎝なのに対して、ボールの直径は約6.5㎝aあります。
そのため、指先を使って何度も動かさないと、押し込んで落とすことができません。
ボールを押し出す箱と同様、両手の指全体を使って、毛糸のボールを穴に押し入れます。
引き出しは、手前に引き出すようにして開けます。
手首を上に向けて3本指でつまみを持って引き出します。
手首を回転させるという、新しい目的が加わります。
ロッキングペグと輪 Rings and Peg on Rocking Base
![](https://life.love-everything.me/wp-content/uploads/2021/08/Sailors-Club-Blog-Banner-8-2-1024x576.jpg?v=1627944104)
市販されている、ロングセラーのおもちゃです。
プラスチック製の輪投げのようなもので、丸い底面が揺れるようになっています。
大きさの異なる5つのリングが付属されていますが、最初は下から2番目のみを使用します。
下に手を入れる空間ができるように、いちばん下のリングは使いません。
やり方を見せるときには、子どもの右隣に座り、子どもの前に台が前後に揺れるように置きます。
ペグに刺さっているリングを両手で出して置きます。
右手の親指と四本指でリングを握り、ペグに通します。
慣れてきたら、右手で出して右手で入れたり、左手で入れたり
色々な指の使いたかた、握りかたを紹介します。
リングはひとつから始め、マスターできたら数を増やしていきます。
子どもをよく見て、変化させていくことが大切です。
ペグと輪 Rings and Peg
![](https://life.love-everything.me/wp-content/uploads/2021/08/Sailors-Club-Blog-Banner-9-1024x576.jpg?v=1627829497)
安定感のある木製の台から垂直に棒が出ていて、そこに輪を出し入れします。
棒の直径はおよそ1㎝~1.5㎝、高さは10㎝くらいです。
ブレスレットやナプキンリングなど、色や素材を変えて輪を準備します。
木や、金属や、ロープなど、輪の素材を変化させることで、質感や重量、太さや厚みなど
様々な触覚体験や筋肉記憶を促します。3本指で輪をつまみ、輪を出して、机の上に置きます。
再び輪を持ち、棒に戻します。
動きを意識することが大切です。
棒に戻す時は途中で手を離さず、音がしないように置きます。
子どもの興味を保つために、おなじものをずっと置いておかないようにしましょう。
![](https://life.love-everything.me/wp-content/uploads/2021/08/DSC_2485-1-1.jpg)
輪とペグのかご Basket with Rings and Peg
![](https://life.love-everything.me/wp-content/uploads/2021/08/Sailors-Club-Blog-Banner-10-1-1024x576.jpg?v=1627944274)
木製の台から垂直に棒が出ていて、台にはかごが固定されています。
ロッキングペグと輪からはじまり、この時期、穴の開いたものを細いものに差し込む(infilare)
という動きを、様々なバリエーションで準備します。
2本の指で輪をつまんでかごから出し、机の上に置きます。
![](https://life.love-everything.me/wp-content/uploads/2023/01/image.png)
持ち方を変えて、2本指で輪の直径をはさむようにして(Cグリップ)棒に通します。
![](https://life.love-everything.me/wp-content/uploads/2023/01/image-1.png)
前段階の活動よりも、直径が少し小さくなっています。
そうすることで、子どもは難なく、少しずつ、最終的にはぴったりにはめることが
できるようになります。
大きさが斬増する円盤 Stacking Discs on Dimensional Gradation
![](https://life.love-everything.me/wp-content/uploads/2021/08/Sailors-Club-Blog-Banner-11-1024x576.jpg?v=1627995310)
木製の円形の台から棒が垂直に出ていて、穴が開いた大中小の3つのディスクを棒に差します。
棒の太さと穴の直径がほぼ同じで、差し込む(infilare) 活動の最終段階です。
2本の指で円盤の直径をはさんで、ひとつずつテーブルに出していきます。
指が届かない子どもは両手を使います。
同じ持ち方で3つの円盤を持つことによって、大きさの違いを体感することができます。
錠と鍵 Locks and Keys
![](https://life.love-everything.me/wp-content/uploads/2022/08/Sailors-Club-Blog-Banner-12.jpg)
長さ3~4㎝ほどの小さな鍵と錠が、ひもで結ばれてセットされています。
左手で錠、右手で鍵を持ち、鍵穴にゆっくりと鍵を入れて見せます。
鍵穴に鍵が入ったら右手を離し、鍵が差せたことを確認します。
再び右手で鍵を持ち、鍵穴から鍵を抜きます。
まずはじめは、この鍵を差して抜く、という動きを繰り返します。
抜き差しがスムーズにできるようになったら、差した鍵を回転させる動きを見せます。
鍵が開くところに子どもは興味をもちます。
空中で物を操作することは難しいので、机の上に置いてすることもできますが
鍵穴が見えづらく、指も動かしづらくなります。
両手を別の動きで使うことも、まだとても難しい段階です。
子どもが興味を示さなければ、もう少し後になってから紹介してもよいでしょう。
ボルトとナット Nuts and Bolts
![](https://life.love-everything.me/wp-content/uploads/2022/11/Sailors-Club-Blog-Banner-13.jpg)
多様なボルトとナットを用意します。
これは、ナッツクラッカーとして売られている、胡桃の殻などを割るための道具です。
最初は大きく扱いやすいものから、だんだん困難性を高くします。
子どもに見せる時は、どちらかを固定し、もう片方の手で絞める、外すの操作を行います。
向こう側に回す時は人差し指が上、手前に回す時は親指が上にくるようにします。
開閉するもの Opening and Closing
![](https://life.love-everything.me/wp-content/uploads/2022/01/Sailors-Club-Blog-Banner-14-1024x576.jpg?v=1642856828)
かごの中に、子どもが簡単に開け閉めできる容器を入れておきます。
缶や紙箱、巾着袋、ボトルなど、子どもの手に合う大きさで
開け方や素材の異なるものを最大で5つ準備します。
蓋を回すタイプのものは、2~3回まわすと開けられるものにします。
スナップやがま口は、おそらくまだ難易度が高いでしょう。
手の動きをよく観察して、発達段階に合ったものを捜してみてください。
そしてひとつだけ、少し難しいものを入れます。
この活動は、机か床で行います。
かごを運んだら容器をひとつ出し、左手で容器を押さえて右手で蓋を開けます。
開いたことを確認したら蓋を閉め、子どもに交代します。
終わった容器はかごの横に置き、順次開閉していきます。
![](https://life.love-everything.me/wp-content/uploads/2022/01/DSC_2821-1024x768.jpg?v=1642859104)
![](https://life.love-everything.me/wp-content/uploads/2021/05/image.png)