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平衡感覚の発達ーThe development of equilibrium
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生物学的に「ヒト」として生まれた赤ちゃんは、周囲の大人が歩く様子を見て
二足歩行をするようになります。
人間社会で育つことによって、人間になるのです。
仰向けに寝ていた状態から、寝返りをしてうつ伏せに。
それから、上半身をぐっと上げて、腕を使ってほふく前進のように動き始めます。
尺取虫のようにおしりが高く上がってきて、はいはいができるようになり、
この頃にはひとりでおすわりもできるようになります。
そして、何かにつかまって立つことができるようになると、伝い歩きを始め、
こんどは手を離して、ひとりで立てるようになります。
赤ちゃんは、いろいろな体勢をとりながら、平衡感覚を養っています。
平衡に気付かせてくれるのは、三半規管や前庭という、耳の中の組織です。
耳には平衡を保ったり、回転を感じたり、身体のバランスを感知する役割があります。
この機能は、生まれたときには発達していません。
使われることによって、発達します。
子どもが歩けるようになるためにも、平衡感覚が必要です。
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そして、自分の身体の状態(腕が伸びている、膝が曲がっているなど)を知るためには
筋、腱、関節の緊張や収縮を知覚する自己受容感=プロプリオセプションが必要です。
平衡感覚と自己受容感覚が同時に働くことによって、目をつむっていても
空間の中で自分の身体の位置を把握することができます。
老化とともに転倒が多くなるのは、筋肉の衰えと自己受容の消失が原因です。
スポーツ選手は怪我のリスクを減らしてパフォーマンスを上げるために、訓練して
自己受容感覚を鍛えます。
子どもが歩けるようになって、ジャンプしたりスキップしたりできるようになるためにも
適切な機会と練習が必要です。
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さて、子どもがなぜ、じっとせずに動き回るのか、理解できましたか。
それはまさに、これらを発達させる時期で、そのために動く必要があるからです!
子どもは何度も繰り返すことによって、それらの機能を育てているのです。
そして、動くことによって、筋力も鍛えられます。
大人が手を出しすぎたり、動きを制止してばかりいると、子どもはやる気を失って
誰かがやってくれるだろうと依存して、自分から動かなくなります。
大人は子どもが何度も繰り返していることを、サポートすることが大切です。
寝返りができそうな子には、興味をひくものを頭の少し斜め上くらいに置いてあげます。
つかまり立ちができるようになったら、支えになるようなバーや安定した家具を置きます。
大人が適切な時期に刺激を与えると、子どもは自己受容と前庭が発達して自分のことが
よくわかるようになり、それが自己肯定感や自立心にもつながります。
子どもは動きたいのです。人として、より人間らしくなることを望んでいます。
ここでは、子どもの動きと、運動を促すための教材を紹介していきます。
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ずりばい Slithering
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うつぶせの状態でおなかを支点として回転し、方向を変えるようになると、
いよいよ赤ちゃんは、自分の力で移動を始めます。
ずりばいのスタイルは、子どもによって色々あります。
”正しいずりばい” があるわけでは、ありません。
大切なのは、赤ちゃん自身から湧き出る「動きたい」という気持ちです。
「動きたい」気持ちを後押しするために、うつ伏せの赤ちゃんから少し離れたところに
ボールやおもちゃを置いてあげることができます。
選ぶポイントは
・早く転がりすぎないこと
・赤ちゃんの小さな手でも、つかみやすいこと=握れるくらいの固さのもの
・口に入れたり舐めたりするので、洗えるもの
です。
ここで紹介するニットのボールは、直径約10㎝です。
市販されているオーボールも、これらの条件を満たしています。
動きは、必ずこころと結びついています。
せっかく手が届いたのに、ボールがまたすぐに転がってしまわないように
つかみやすいボールを選んであげてください。
大人がからかって、ボールを遠ざけたりするのもやめましょう。
座る Sitting
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ひとりでお座りができるようになったら、椅子に座ることを紹介します。
視野が高くなるので、子どもはとても喜びます。
選ぶポイントは、安定感です。
この時期の椅子は、しっかりとした重いつくりの木製のものが適しています。
もしも軽い場合には、重しをつけて安定させます。
座面の高さは15-16㎝で、後ろに少し傾斜していると安定感が増します。
また、左右に体重が傾いても落ちることがないように、ひじ掛けがお腹よりも
上の高さにあるものを選びます。
はいはい Crawling
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ずりばいからおしりが上がってきて、腕も強くなってくると
子どもは、はいはいを始めます。
はいはいができるようになる頃、同時に両眼視の機能が発達します。
両眼視とは、左右ふたつの眼を連携させて、立体感や奥行、深さなどを感じる能力です。
転がるおもちゃを目で追い、両眼視によって、転がったものがどのくらいの位置にあるのか、
距離感や奥行感がわかるようになります。
右脳と左脳のコミュニケーションがスムーズになると、左右交互にはいはいをして
早く行きたいところにたどり着くようになります。
動く自由を手に入れた子どものこころを満たすものは、運動そのものです。
おもちゃに触れる、遠ざかる、また追いかける、
そんなふうに思い通りに動けることが楽しくて、何度も繰り返します。
円柱状で中に鈴やボールが入っているものや、ボールや円盤状のものなど、
異なる大きさや種類の、転がるおもちゃをいくつか用意しましょう。
はいはいできる子どもの前において、1mほど遠退くように転がして見せます。
ずっと同じものを使用するではなく、子どもの能力、力強さ、経験によって
その時の発達段階に合ったものに、変更していきます。
つかまり立ち Pulling to Stand
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お座りが安定し、上半身は姿勢が保てるくらい強くなりました。
はいはいで、両手も足首も鍛えられました。
床よりも高いところに手をついて、上体が持ち上がると、膝立ちの状態になります。
そして、最初は前のめりに、上半身で寄っかかりながら、赤ちゃんは立ち上がるようになります。
この時期にあると良いものは、オットマンなど角のない、重くて安定した家具や、手すりです。
カーテンやブラインド、倒れやすい観葉植物などは、不安定で危険です。
また、思わぬところでタバコや電気ポット、コンセントなどにも手が届くようになります。
ボタン電池や小さなおもちゃの部品などの誤飲、転倒にも注意してください。
危険なものはいったん部屋から排除して、赤ちゃんの行動範囲に置かないようにしましょう。
この時期だけです、また戻すことができます。
カーテンは常に束ねて、ブラインドは届かない高さまで上げておきます。
Cruising つたい歩き
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つかまり立ちをしてから、ひとりで歩けるようになるまでのあいだに、
つたい歩きがあります。
壁や手すり、安定した家具などに手をかけ、それに沿って横歩きで移動します。
つかまり立ちやつたい歩きをすることで、赤ちゃんは足腰の筋力を鍛えながら
ひとり歩きするためのバランス感覚を養います。
つたい歩きの時期、手押し車があれば、押しながら歩くことができます。
体重をかけてもひっくり返らない、安定した重さのあるものを選びましょう。
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こま Spinning Top
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わたしはコースで紹介されるまで、このようなタイプのこまは見たことがありませんでした。
ねじ状の軸を押し下げることで回転するブリキのこまです。
おすわりの時期から、大人が回すのを見て楽しむことができます。
動きがおもしろくて、ずりばいができる子どもは近づいてきます。
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立ってバランスを保てるようになると、自分でスイッチを押して遊べるようになります。
子どもは両手を使って、全身のバランスを取りながら、こまの速度を調整します。
動き回る様子を見せたいので、軸の接地面に吸盤がついていないものがおすすめです。
トラッカー Tracker
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ボールが斜面を右へ左へ、リズミカルに音をたてながら転がる様子が楽しいおもちゃです。
環境に不安を感じている子も思わず見入って、そしてやってみたくなるような魅力があります。
上からボールを落としたい、という気持ちが、つかまり立ちを後押ししてくれるので
しっかりと安定したもの、壁に固定できるものを選びましょう。
しゃがんでボールを取り、また立ち上がって手からボールを離し、上から落とす。
動くボールを目で追跡する。
子どもは、何度も繰り返します。
数か月すると、転がるボールを途中でつかみ取ることができるようになります。
動体視力を鍛えることは、反射神経や運動神経も向上させます。
平衡感覚、全身の運動、指先の運動、目と手の協応、視力の発達にも貢献してくれる
素晴らしいおもちゃです。
そして、すべての活動に対して言えることですが、何よりも素晴らしいのは
この活動が、子どもの心を満たしてくれるということです。
子どもは楽しんで、繰り返し遊んで、自分に満足して、とても満たされます。
階段 Stair
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わたしたちが階段を登るとき、その目的は高い場所へ移動することです。
けれど小さな子どもは、階段を上り下りすること自体を楽しみます。
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モンテッソーリのクラスに置かれた木製の階段には手すりがついていて、
方向転換しなくても登って降りることができるように作られています。
段の奥行が広く、一段の高さも5㎝くらいです。
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ずりばい、たかばい、つかまり立ち、はいはい、歩ける子どもなど、色々な段階の子どもが
安全に利用することができます。