モンテッソーリ教育には「日常生活の練習」という分野があります。

その中には食べ物の活動も含まれていて、ニドやICといわれる3歳以下のクラスにも

子どもたちが参加できる食卓の支度や、調理活動が準備されています。

子どもたちは、食べ物の活動が大好きです。

ぜひ、本当のことを経験させてあげましょう。

調理活動は、パーフェクトに子どもの発達に貢献するお仕事といえます。

なぜなら、0-3歳の発達目標のすべてを網羅しているのが、調理活動だからです。


「運動の発達」

自分のお皿に取り分けたり、よそったものを運んだり、調理器具を使うことは

指先や全身の運動機能を洗練させます。

「感覚器官の発達」

調理過程で変化する食材に触れることで、触覚、嗅覚、視覚、聴覚を刺激し

最終的に味わうことで、五感のすべてを使います。

感覚には圧覚や、固有受容覚もあります。

筋肉や腱、関節などで感じる固有受容覚は、姿勢を保持したり

体をスムーズに動かすために働きます。

「言語の発達」

食材や調理器具の名前、動きや状態(ぐつぐつ、ひたひた、固い、やわらかい)

味わい(甘い、酸っぱい、苦い)など、さまざまな表現を知ることができます。

野菜の仲間、調味料の種類など、カテゴリー化することが、概念の形成を助けます。

「社会性の発達」

誰かの分をよそってあげたり、みんなのために食卓を準備することは

社会性を養います。

みんなが揃うまで待つことや、挨拶をしてから食べることで

礼儀やマナーを伝えることができます。

「意識(意志)の発達」

自分で活動を選んだり、食べる量を考えて取り分けることが、意志の発達を手伝います。

また、自分が食べたいと思った時に何かを作ることができ、みんなのためにつくって

それを振舞うこともできるのだという経験が、自尊心を高めます。


このように調理活動は、単にそのことができるようになる(スキルを身につける)という

ことだけにとどまりません。

活動を通して知性、運動、意志が統合され、発達に貢献すること。

それによって自立を促すことが、調理活動の目的なのです。

園では教材は活動ごとにカラーコーディネートされ、トレイにセットして棚に置いてあり

準備から片付けまでの提供方法が明確です。

しかし家庭での調理は、より実生活に密着していて、子どもはお母さんが料理する姿を

生まれた時からずっと見てきています。

ここでは、園とは視点を変えて、おうちの中でお母さんといっしょに料理をする前提で

子どもが一部分に関わったり、簡単な一品を作れるような活動を紹介しています。

子ども専用のまな板やエプロンをひとつ準備してあげたり、

自由に使ってよい調理器具だけをまとめて置いておくとよいでしょう。

家庭のキッチンは子ども仕様ではないので、危険なものは手の届かない場所に置く、

子ども用のテーブルで活動するなどの配慮が必要です。

以下は、調理活動において共通する大切なことです。

本物の調理器具をつかう

  バナナを切るためのバターナイフ、きゅうりを切るための先の丸い包丁など

  発達の段階に応じて、安全に配慮した子どもサイズの、本物の器具を使います。

・目的を明確に伝える

  何を作るために、何をしてほしいのか。遊びではなく、目的があることを伝えます。

  「ヨーグルトに入れるためのくだものを切ってくれる?」

・使うものについて説明する

  「これは、バナナを切るためのナイフとまな板。」

  「ナイフの銀色のぴかぴかしているところは、危ないので触らないでね。」

  「むいた皮はここ、切ったバナナはこのお皿にのせてね。」

・やり方をゆっくり、丁寧に見せる

  動き(動詞)のひとつひとつをわけて、ゆっくり丁寧に見せます。

  子どもがやりたがったら交代します。

  必要であれば最初は手を添えるなどしてサポートしますが、

  できる事を手伝う必要はありません。

大人でも、初めて口にする料理は警戒してよく見たり、匂いを嗅いだり

少しだけかじってみたりするものです。

感覚が敏感な子どもは、特に食べ物に対して慎重になる傾向があります。

調理の過程でもとの形が変化する様子や、材料から料理の全体像を見せることで

安心したり、調理に関わることが食べる意欲につながったりします。

はじめは、キッチンが汚れたり、洗い物が増えたり、料理の時間がかかったり

負担に感じるかもしれません。

けれど、経験しなければ、できるようにはならないのです。

本当に忙しい時、子どもが丁寧にゆで卵の殻をむいてくれたりすると

心から「ありがとう!」のことばが出てきます。

家庭のキッチンは、素晴らしい学びの環境です。

安全に気をつけて、いっしょの時間を楽しんでくださいね。